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Vol.102 食べても満足しない脳

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10月17日発行の『Science』に掲載されたオレゴン研究所のエリック・スタイス博士らの研究によると、食べ過ぎて肥満することは、脳のドーパミンなどの喜びを感じる神経伝達物質の分泌が十分でないことに関連しているかもしれないそうです。

この結論は、太った若い女性は、チョコレート・ミルクシェーキを飲んだときに、同世代の痩せた若い女性よりも、ドーパミンの分泌が少ないという今回の結果から、導き出されました。「つまり太ってしまう人は、痩せている人よりも、食べることに対する喜びを感じる脳の感受性が弱いのかもしれない」ということです。

実験は平均年齢15.7歳、平均BMIが24.3の33人の肥満ではない一般的な女性のグループと、平均年齢20.8歳で、平均BMIが28.6のやや肥満気味の43人の女性のグループを対象に行われ、甘くておいしいチョコレート・ミルクシェーキと、味のない液体を飲んだときの、MRI画像による脳の反応と、血液検査の結果を比較しました。

以前までの実験では、食事を摂ることによって、大脳基底核の「背側線条体(新線条体)」でドーパミンレセプターが放出されて、喜びや満足感を感じることがわかっています。

今回の実験によると、おいしいミルク・シェークを飲んだとき、肥満していないスリムなグループは、大脳基底核にある「尾状核」(左側)が刺激されて、活動が活発になることがわかりました。

***この「尾状核」が刺激されると、食欲が抑制されます。これは、霊長類の脳の「尾状核」を電気的に刺激すると、バナナを見ても欲しがらなくなるという実験からも明らかになっています。

また、今回の研究で、ドーパミンレセプターの数を少なくすることに関係する、A1対立遺伝子(TaqIA制限酵素断片長多型)の存在が、左の尾状核の活動を低下させて、肥満させることに関連することが示唆されています。

つまり、食べ過ぎて太ってしまう人は、背側線条体でのドーパミンの放出が少なく、そのために、食べることによって放出されるドーパミンの量も少ないので、食欲を満たすことができず、普通の人よりも多く食べてしまい、肥満になるのかもしれないことや、その背景には、太っている人が、ドーパミンレセプターを少なくするA1対立遺伝子を持っていることが関係していることを示唆しました。
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by womanhealth-lab2 | 2009-06-26 12:51 | 海外の医療健康情報

Vol.101 オレゴン州の尊厳死法とうつ病について

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イギリスメディカルジャーナルのオンラインで報じられた、オレゴン健康社会大学のリンダ・ガンジニ博士らの研究によると、オレゴン州の尊厳死法で自殺の介助を求めた人々は、臨床的にはうつ病ではないとしながらも、致死薬の処方を受けた人の17%は、うつ病の基準に合致したと発表しました。

オレゴン州の尊厳死法は1997年に施行された法律で、尊厳死はアメリカでもオレゴン州以外では認められていません。世界では、ほかにベルギーとオランダが認めています。
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この法律は、2人の医師が、患者の余命を半年未満と診断し、主治医がその報告を受けて致死量の薬を処方して、患者がこれを服用することができる、というものです。

1994年のオレゴン州民の投票の結果、51%対49%で、一旦は可決しましたが、訴訟となり、1997年にサイド州民投票が行われ、60%対40%で、法案が成立して、施行されたという、賛否両論の激論が繰り広げられた末にできた法律です。

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これについてガンジニ教授は、患者のうつ的な傾向が、尊厳死の選択をする際に影響を与えてしまわないように、患者を保護する必要があると述べ、そのためには患者の精神状態を正しく判断できるような、精神科医や心理学者に、評価してもらう必要があることを指摘しています。

しかしながら、2007年に尊厳死を選択して亡くなった人は、誰もそのような措置をとっていなかったそうです。

そこで、博士らは、医師に尊厳死を求めた人、もしくは尊厳死に関する法律相談組織とコンタクトを取った58人を対象に研究を開始しました。

博士らは、被験者に対して、うつ病の検査の黄金律と言われる、アメリカ精神医学会の診断マニュアル4のテストと、インタビュー調査のようすをテープに取って評価を行いました。

その結果、58人のうち、15人(25%)は、うつ病の基準を満たしていたと判断できると博士らは発表しています。

さらに、調査終了までに亡くなった42人のうち、18人には実際に致死薬が処方され、9人がそれを処方して亡くなりましたが、18人のうちの3人は、うつ病の基準を満たしており、精神科や心理学者による評価を、生前に受けるべきだったと言います。

博士は、尊厳死の判断を下す医師たちは、「医者の経験や勘に頼るのではなく、しっかりと科学的根拠に基づいた質問をするなどして、判断をするべきだ」と述べています。さらに今回の研究に参加した58人という数字は、尊厳死を希望する人全体の27%でしかなく、実際にはもっとたくさんの「救うべき人」が存在することを示唆しました。

今回の研究についてオランダのヘレン・ダウリング研究所のマリジェ・ヴァンデルリー博士は、「尊厳死のほとんどのケースが、患者の寿命を1ヶ月程度短くするだけだとも言われています。現状では、うつ病に関する検査をするための、十分な時間があるとはいえません。もっと早い時期に、うつ病であるかどうかのスクリーニングテストを行う必要があるでしょう。さらにもっと言えば、自殺幇助(のような行為)から患者を救う前に、うつ病から患者を救うのが先決です」とコメントしています。

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予断ですが、オレゴン州では、この法律が施行されてから、ホスピスに登録する末期患者が急増したそうです。
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by womanhealth-lab2 | 2009-06-26 12:48 | 海外の医療健康情報

Vol.100 低容量の女性ホルモン療法は、肌老化の予防にならない?

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閉経後の女性の顔のシワ、たるみなどは、長期間の低用量女性ホルモン(黄体ホルモン、および卵胞ホルモン)の服用では、改善しないという報告が、複数の医療機関で行われた調査結果をもとに報告されました。

「多くの女性ホルモンによる、肌老化の改善を報告した研究は、高容量の女性ホルモンを投与した場合でした」とボストン大学のタニア・フィリップ博士がロイターニュースに語ったそうです。

9月発行のJournal of the American Academy of Dermatologyに掲載された研究報告によるとよると、黄体ホルモンを1ミリグラムと、卵胞ホルモンを5マイクログラムを1日1回摂取した162人と、黄体ホルモンを1ミリグラムと卵胞ホルモンを10マイクログラム摂取した158人と、プラセボ集団165人を比較しました。(平均年齢が53.6歳、最終月経から平均59ヶ月経過している状態の女性)

その経過を、4週目、12週目、24週目、36週目、最後に48週目と継続的に調査してみた結果、肌のシワ、シミ、キメ、たるみ、乾燥などに関して、3つのグループに顕著な違いが見られませんでした。

研究結果には、人種や喫煙習慣、飲酒の習慣などによる差もなかったそうです。

しかし、この結果だけでは、閉経前の女性に対する女性ホルモンの美肌効果については推測することができないと、研究者は述べています。

「肌老化に悩む高齢女性に対するアドバイスとしては、基礎的なスキンケアと、紫外線対策を行うことをまず推奨すべき。ビタミンAを塗ることは、光老化を改善する」と、フィリップ博士は述べています。

さらに博士は、「今回の研究でわかったことは、閉経直後の女性ホルモン療法が、肌老化の改善効果があるかもしれないということですが、それを証明するには大規模な調査を行う必要があります」と言いました。

J Am Acad Dermatol.2008;59:397-404
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by womanhealth-lab2 | 2009-06-20 12:48 | 海外の医療健康情報

Vol.99 健康にいいのはモーツァルトより波の音?

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モーツァルトのセレナーデよりも、浜辺の波打ち際の波の音のほうが、
高齢者の高血圧の症状を和らげる効果が高いかもしれないという発表が、
9月に米国アトランタで行われたアメリカ心臓学会の高血圧研究会議において、
シアトル大学のシン・イ・タン博士らによって発表されました。

使用された波音のプログラムは、副交感神経の働きを沈静させて、血管を拡張させることで、スポーツ選手の疲労回復、顎関節の痛み、慢性的な痛み、がん患者の緩和治療などとして用いられているもの。

12分間のCDでは、穏やかな波の音がゆったりと流れる中で、男性の声で深い深呼吸ができるように指導しています。

このCDと、モーツァルトの交響曲第13番ヘ長調 K112、交響曲第35番二長調K250(ハフナー)のアンダンテ部分を聞き比べする実験を行いました。

実験は、精神的に健康で老人ホームに住む降圧薬を服用する高血圧の老人を対象に4週間行われました。

その結果、収縮期血圧で比較すると、モーツァルトを聞いたグループが、6mmの血圧低下だったのに対し、波音のグループは、9mmの低下が見られました。

ほかの研究結果では、5mmの収縮期血圧の低下は、脳卒中による死のリスクを14%、冠状動脈性心臓病疾患による死のリスクを9%も低下すると報告されていることから、波音のプログラムがより効果的に高血圧の人の血圧低下に効果を発揮することを指摘しています。

ただし、実験中におもしろかったこととして、数人の波音を聞いていた実験参加者が、血圧が低下したにもかかわらず、モーツァルトに変えて欲しいと訴えたそうです。

博士らは、世の中のリラグゼーション音楽といえば、モーツァルトが定番になっていますが、ほかの音楽や音にも、モーツァルトと同様かそれ以上の効果を持つものがあるかもしれないことを指摘しました。

Tang H-Y, et al"A randomized Trial of Music versus Audio-guided relaxation Training to Decrease Blood Pressure in an Elderly population"AHA-BP 2008;AbstractP037

■■この実験に使われたハフナーという曲は、モーツァルトのセレナーデの中でも祝賀曲だし、もっとゆったり落ち着く選曲をすれば、やっぱり波よりもモーツァルトのほうが、リラックスするような気がしますが…。(ちなみに私はモーツァルト好きです)

結局、自分がリラックスできる曲を見つけておくことが大事だという結論でしょうね。
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by womanhealth-lab2 | 2009-06-20 12:43 | 海外の医療健康情報