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Vol.98 認知症治療と過食抑制

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アルツハイマー病の新たな治療薬として注目されている「メマンチン」という薬が、摂食障害に効果的だという調査結果が米国マサチューセッツ州ベルモントのマクリーン病院のブレイン・ブレナン教授らによって報告されました。

しかし、5人の患者を対象に行った予備調査では、体重の減少も過食を起こす回数も減っていたのに対し、16人の摂食障害の患者を対象に1日5~20ミリグラムのメマンチンを飲ませた本調査の結果では、過食の回数は減少したものの、体重の減少にまでは結びつかなかったということでした。

また摂食障害の症状を測定する調査結果の指数や評価基準では、改善の傾向が見られましたが、抑うつ傾向や不安障害、意識的な食欲の抑制や空腹感などを測定する調査では変化が認められませんでした。

今回の調査ではプラセボ群を設定していないため、今後は被験者を増やしてプラセボ群との比較を行う予定だそうです。

脳内神経物質であるグルタミン酸の働きを抑制する薬物療法は、今後摂食障害の治療に使われるかもしれないことを、ブレイン・ブレナン教授は指摘しています。

Int J Eat Disord 2008;41:520-526.


グルタミン酸はアセチルコリンと同様に、神経を興奮させる物質ですが、食べ物のうまみ成分として有名で、おいしさによって脳を興奮させて食欲を高める作用があります。

メマンチンはアリセプトのようなアセチルコリン系の薬ではなく、グルタミン酸系の薬で、アルツハイマー病の症状のひとつ、海馬の萎縮で起こる記憶障害に何らかの効果があると期待されています。
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by womanhealth-lab2 | 2009-05-26 00:38 | 海外の医療健康情報

Vol.97 季節性感情障害(SAD)の謎をPET検査で解く

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脳内にセロトニンが不足すると、不安やうつ、落ち込み、疲れ、集中力欠如などが生じます。
今まではセロトニン神経系の研究や検査の手段として、血清や脳脊髄液を採取する検査法が主流でしたが、最近ではPET検査で脳の中で働くセロトニン神経系のようすを観察する(in vivo研究)ことが可能になり、これによって、手探り状態だった脳神経のさまざまな機能が解明されつつあります。

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カナダトロント大学ニコール・プラチャク・リーダー博士らの研究によると、PET検査(Positron ポジトロン Emission エミッション、Tomographyトモグラフィ=、陽電子放射線断層撮影法)を用いた実験で、脳内のセロトニントランスポーターの濃度が、季節によって変動し、春と夏よりも、秋と冬のほうが、顕著に高くなることが明らかになりました。

【セロトニントランスポーターは、脳のシナプシスにあるセロトニンを再吸収、再取り込みすることで、シナプシス内のセロトニンを減らしてしまい、これに伴って不安やうつなどの症状が生じると言われています。つまりセロトニントランスポーター濃度が上がるということは、脳のシナプシスのセロトニンを減らして、気分障害を起こす誘引になるということです】

そしてセロトニントランスポーター濃度の季節変動が、季節性感情障害(SAD:Seasonal affective disorder)と関係していることが過程できると説明しています。

また、日照時間と気分の変動についても触れ、人は太陽の下では、幸せな気分でエネルギッシュに活動しますが、暗いところで生活すると楽観的でなくなり、気分も落ち込みやすくなることを指摘。日照時間とセロトニントランスポーター濃度に何らかの関係があるという仮説を立てて、実験を開始しました。

実験はトロント在住の20歳から51歳までの平均年齢33歳の、41人の女性と47人の男性を対象にPET検査を実施。
性別に関係なくセロトニントランスポーターの濃度は、秋と冬に高く、春と夏は低かったという結果になりました。
また、日照時間が少ない日ほど、セロトニントランスポーターの濃度が高いことも判明。

この結果から、「我々は遺伝子を変えたり、ストレスから逃れたりすることが難しい現状の中で、季節の環境変動をうまく調整して、気分の落ち込みやストレスなどを回避することを考えるのが重要である」と主任研究員でトロント大学のジェフリー・メイヤー教授が話します。

SAD患者に処方されるSSRIという薬も、セロトニントランスポーターの働きを80%程度阻害しますが、光を十分浴びることも、症状を改善する一助となると指摘しています。

今後このグループでは、セロトニントランスポーターにいい影響を与える最適な光の曝露方法や環境づくりについて研究を進めるそうです。

Arch Gen Psychiatry 2008;65: 1072-1078

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ちなみにSSRIは、セロトニントランスポーターだけでなく、アドレナリントランスポーターの再吸収も阻害するので、セロトニン、アドレナリン(快楽物質とも言われています)、どちらが増えたことで、気分が改善されるかは特定できません。

最近では、セロトニンとノルアドレナリン(覚醒、積極性が出る物質で低下すると無気力、無関心になる)の再吸収を阻害するSNRIという薬が注目されています。

同じうつ病という病名でも、人によってどの脳内物質が不足しているかが異なるので、治療薬も異なるということですね。
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by womanhealth-lab2 | 2009-05-26 00:35 | 海外の医療健康情報

Vol.96  子供のひどい下痢と亜鉛

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亜鉛は貝類や魚、海藻類、ナッツ類、胚芽米や玄米などに多く含まれるミネラルで、タンパク質の合成や細胞分裂を促進する働きを担っており、成人は1日15ミリグラムを摂取することが推奨されています。

この亜鉛が毎年世界中で約200万人の子供たちが命を落とす慢性的な下痢に、有効であるという調査結果がイタリアの研究者らのによって報告されました。

摂取する亜鉛の量は1日5㎎。下痢や脱水症状によって亜鉛が不足しがちになり、急性の亜鉛欠乏症になった場合、亜鉛サプリメントを経口投与することで、下痢症状を早く改善することができるそうです。

食生活が偏って、亜鉛が慢性的に不足になると、成長障害や味覚障害などを起こしたり、最近では子供が短気でキレやすくなった原因として、亜鉛不足が関係しているという研究者もいます。
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by womanhealth-lab2 | 2009-05-19 00:34 | 海外の医療健康情報

Vol.95 幼児の遊びを妨害するテレビつけっぱなし生活

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幼児のテレビ視聴は、たとえ短時間であっても、子どもたちの遊びを妨害し、認知発達にいい影響を与えないので、好ましくないことを、マサチューセッツ大学のマリー・エヴァンス・シュミット教授らが『Child development』7・8月号に発表しました。

幼児が遊んでいる場所で、テレビをつけっ放しにしておくことは、子どもの遊びへの集中力を低下させて、気を散らしてしまうそうです。

そして付けているテレビ番組が大人向けのもので、幼児が理解できないような内容であっても、テレビの音などで、子どもの遊びに対する集中力が低下すると筆者は語っています。

米国小児科学会も、2歳以下の幼児のオーディオビジュアルの視聴は避けるべきであることを推奨しています。

シュミット教授らは、1歳から3歳までの50人の乳幼児を対象に、調査を実施。
実験室で約1時間、親と一緒にさまざまなおもちゃで遊ぶ様子を観察しました。
1時間の遊び時間のうち、最初の30分間は、コマーシャルを含む大人向けのテレビショー(バラエティ番組)をつけながら遊ばせて、残りの30分間はテレビを消して遊ばせました。

遊びのようすは6分間ごとに分析され、子どもたちが遊びの間にテレビを見る回数と時間、集中しているようすなどを測定しました。

調査結果では、子どもたちがテレビを見ていた時間は遊び時間の約5%に留まりましたが、
テレビが付いているときの遊び時間は、6分間ごとに18秒ずつ減少しています。

さらに、テレビが付いているときは、継続的に遊びに集中している時間が短く、
遊ぶおもちゃの種類も少なくなっていたことがわかりました。

この実験は1時間という限られた時間だったので、
テレビ視聴が及ぼす幼児の遊びへの影響が小さいものだとしても、
自宅でもっと長時間、テレビをつけっぱなしの環境で過ごすことによって、
累積的な影響が出ることも十分に考えられると博士らは指摘しています。

Schmidt ME, et al
"The effects of background television on the toy play behavior
of very young children" Child Development 2008;
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by womanhealth-lab2 | 2009-05-19 00:30 | 海外の医療健康情報