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Vol.101 オレゴン州の尊厳死法とうつ病について

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イギリスメディカルジャーナルのオンラインで報じられた、オレゴン健康社会大学のリンダ・ガンジニ博士らの研究によると、オレゴン州の尊厳死法で自殺の介助を求めた人々は、臨床的にはうつ病ではないとしながらも、致死薬の処方を受けた人の17%は、うつ病の基準に合致したと発表しました。

オレゴン州の尊厳死法は1997年に施行された法律で、尊厳死はアメリカでもオレゴン州以外では認められていません。世界では、ほかにベルギーとオランダが認めています。
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この法律は、2人の医師が、患者の余命を半年未満と診断し、主治医がその報告を受けて致死量の薬を処方して、患者がこれを服用することができる、というものです。

1994年のオレゴン州民の投票の結果、51%対49%で、一旦は可決しましたが、訴訟となり、1997年にサイド州民投票が行われ、60%対40%で、法案が成立して、施行されたという、賛否両論の激論が繰り広げられた末にできた法律です。

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これについてガンジニ教授は、患者のうつ的な傾向が、尊厳死の選択をする際に影響を与えてしまわないように、患者を保護する必要があると述べ、そのためには患者の精神状態を正しく判断できるような、精神科医や心理学者に、評価してもらう必要があることを指摘しています。

しかしながら、2007年に尊厳死を選択して亡くなった人は、誰もそのような措置をとっていなかったそうです。

そこで、博士らは、医師に尊厳死を求めた人、もしくは尊厳死に関する法律相談組織とコンタクトを取った58人を対象に研究を開始しました。

博士らは、被験者に対して、うつ病の検査の黄金律と言われる、アメリカ精神医学会の診断マニュアル4のテストと、インタビュー調査のようすをテープに取って評価を行いました。

その結果、58人のうち、15人(25%)は、うつ病の基準を満たしていたと判断できると博士らは発表しています。

さらに、調査終了までに亡くなった42人のうち、18人には実際に致死薬が処方され、9人がそれを処方して亡くなりましたが、18人のうちの3人は、うつ病の基準を満たしており、精神科や心理学者による評価を、生前に受けるべきだったと言います。

博士は、尊厳死の判断を下す医師たちは、「医者の経験や勘に頼るのではなく、しっかりと科学的根拠に基づいた質問をするなどして、判断をするべきだ」と述べています。さらに今回の研究に参加した58人という数字は、尊厳死を希望する人全体の27%でしかなく、実際にはもっとたくさんの「救うべき人」が存在することを示唆しました。

今回の研究についてオランダのヘレン・ダウリング研究所のマリジェ・ヴァンデルリー博士は、「尊厳死のほとんどのケースが、患者の寿命を1ヶ月程度短くするだけだとも言われています。現状では、うつ病に関する検査をするための、十分な時間があるとはいえません。もっと早い時期に、うつ病であるかどうかのスクリーニングテストを行う必要があるでしょう。さらにもっと言えば、自殺幇助(のような行為)から患者を救う前に、うつ病から患者を救うのが先決です」とコメントしています。

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予断ですが、オレゴン州では、この法律が施行されてから、ホスピスに登録する末期患者が急増したそうです。
by womanhealth-lab2 | 2009-06-26 12:48 | 海外の医療健康情報
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